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曇天パッチ

『殴る、斬る、撃つ』 暴力エンターテイメント好きの視点

『真夜中のカーボーイ』 生まれ変わるための決別

真夜中のカーボーイ
Midnight Cowboy
監督 ジョン・シュレシンジャー
脚本 ウォルド・ソルト
原作 ジェームズ・レオ・ハーリヒー
製作 ジェローム・ヘルマン
出演者 ジョン・ヴォイトダスティン・ホフマン

「ダーリング」「遥か群衆を離れて」のジョン・シュレシンジャー監督による異色作品。虚飾の大都会ニューヨークの混沌から、必死に浮かび上がろうとする2人の若者の物語。ジェームズ・レオ・ハーリヒーの作品を、ウォルド・ソルトが脚色した。撮影はコマーシャル出身のアダム・ホレンダー、音楽はジョン・バリー、編集はヒュー・A・ロバートソンが担当。製作にはジェローム・ヘルマンが当たっている。出演は「卒業」でスターとなったダスティン・ホフマン、舞台出身のジョン・ヴォイト。共演はベテランのシルヴィア・マイルズ、ブロードウェイ女優ブレンダ・ヴァッカロ、「ニューヨーク泥棒結社」のジョン・マクギバー、バーナード・ヒューズなど。(映画.comより抜粋)

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主人公のジョーは自身の魅力を武器にのし上がろうと、テキサスからニューヨークにやってくる。男娼になろうともがく中で、病弱ホームレスのラッツォと出会い、奇妙な同居生活を送る事になる。やがて男娼として成功する兆しが見えてくるが、ラッツォの病気が悪化したことをきっかけに、二人は暖かいフロリダへ行く事を決意する。

 

言わずと知れたアメリカン・ニューシネマの代表作。誰もが目を背けたくなるような現実を、現実逃避のはずの映画が描き出す。カメラは無気力だったり無軌道な若者の悲惨な生活を捉え、60年代のアメリカが抱える価値観、広大な国土を自由に行き来できるはずのアメリカが抱える閉塞間などを暴いていく。世界はいつも陰鬱でどん底なのだ。

 

本作はこれらに加え、信仰、同性愛、売春といった要素で構成されている。そういった要素の考察は多くの方がされているので、ここでは印象に残った事について書いていく。それは、ニューヨークのどん底で生活しているジョーが、自身を構成している要素と向き合うことで成長し、事態が改善していくことだ。

 

例えば肌身離さず持ち歩いていたラジオを質屋で売った時を思い出してみよう。いつも宗教ラジオを聴いていて周囲に溶け込まなかった彼は、その後レストランで初めてニューヨークの住人と交流し、パーティーに招かれることで、人脈を作っていく。あるいは、毛皮を身にまとった女性とのベッドシーン。ジョーは自身の中にある同性愛的な要素を指摘されるが、それを否定するように暴力的なセックスをすることで、男娼として認められるようになる。

 

映画の冒頭、ジョーはいかにも田舎のカウボーイといった出で立ちでバスに乗り込む。彼はニューヨークでどん底を味わうことになり、そこには観客が求める希望がないように思える。しかし、周囲とのコミュニケーションをとるようになり、自身のトラウマやセクシャリティと向き合うことで、カウボーイとしての自身を脱ぎ捨て、成長とともに閉塞感から逃げ出すきっかけが生まれてくる。もがき苦しみながらも一歩ずつ前進していく姿に、他のアメリカン・ニューシネマには見られない希望を見出すことができる。

 

フロリダへ向かう道中で、ついにジョーはカウボーイ服を捨て、フロリダらしい陽気な服に着替える。明るい未来に期待が膨らむが、目的地を前にしてラッツォは息を引き取る。アメリカン・ニューシネマらしい陰鬱な終わりにも捉えられるが、ここではバスに乗り込む前にジョーが何をしたかが重要だ。ジョーは老人に暴力をふるい、金を奪い取るという犯罪により一線を越えてしまう。これは過去に浸礼を受けたジョーが、再び罪をおかしてしまいただの人間に戻ったとも受け取れる。つまり、信仰を捨てたのだ。ニューヨークで見つけた友と死別してしまったが、最後にジョーは自身を構成する要素全てと向き合い、決別する。これまでの流れでみれば、成長して生まれ変わったジョーは、必ず幸せになれるはずだ。そんな予感がするからこそ、本作は多くの観客の記憶に残る名作なのだ。

 

 

 

個人的に アメリカン・ニューシネマといえばこの4本。

  

  

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