ヘイトフル・エイト(2016年)
ヘイトフル・エイト
The Hateful Eight
監督 クエンティン・タランティーノ
脚本 クエンティン・タランティーノ
製作 リチャード・N・グラッドスタイン(英語版)
ステイシー・シェア
シャノン・マッキントッシュ
製作総指揮 ボブ・ワインスタイン
ハーヴェイ・ワインスタイン
ジョージア・カカンデス
ナレーター クエンティン・タランティーノ
出演者 サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ジェニファー・ジェイソン・リー、ウォルトン・ゴギンズ、デミアン・ビチル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、ブルース・ダーン、ジェームズ・パークス、チャニング・テイタム
「イングロリアス・バスターズ」「ジャンゴ 繋がれざる者」のクエンティン・タランティーノ監督の長編第8作で、大雪のため閉ざされたロッジで繰り広げられる密室ミステリーを描いた西部劇。タランティーノ作品常連のサミュエル・L・ジャクソンを筆頭に、カート・ラッセル、ジェニファー・ジェイソン・リー、ウォルトン・ゴギンズ、デミアン・ビチル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、ブルース・ダーンが出演。全員が嘘をついているワケありの男女8人が雪嵐のため山小屋に閉じ込められ、そこで起こる殺人事件をきっかけに、意外な真相が明らかになっていく。音楽をタランティーノが敬愛する巨匠エンニオ・モリコーネが担当し、第88回アカデミー賞で作曲賞を受賞。モリコーネにとっては、名誉賞を除いては初のアカデミー賞受賞となった。70ミリのフィルムで撮影され、画面は2.76:1というワイドスクリーンで描かれる。(映画.comより抜粋)
ついに『ヘイトフル・エイト』のBlu-rayとDVDが発売された。劇場版から半年ぶりの鑑賞だったが、緊迫した会話劇、ダイナミックかつリッチな映像といった、本作の持つ魅力的な要素は、二度目の鑑賞こそ楽しめるものだった。そういった要素を支えるウルトラ・パナビジョン70について、今回改めて勉強したので、自分の復習の意味でもまとめていく。
ウルトラ・パナビジョン70(Ultra Panavision 70)とは『ベン・ハー』や『バルジ大作戦』といった60年代の映画で使用された撮影方式だ。アスペクト比は2.76:1。一般的な映画で用いられるシネスコが2.34:1なのだから、比べると非常に横長の画面なのが分かる。
なんとなく難しいカメラの話に思えてくるが、仕組み自体は非常に簡単だ。まず65mmフィルム専用のカメラを用意し、アナモフィックレンズを取り付ける。アナモフィックレンズとは映画フィルムにワイド映像を記録するときに用いられる特殊なレンズのことを指す。これを取り付けて撮影すると、画面を水平方向に圧縮・縮小して記録できる。こうして撮影された映像は、70mm映写機に取り付けられたアナモフィックレンズで元のサイズに拡大され、ウルトラ・パナビジョン70としてスクリーンに映し出される。
サミュエル・L・ジャクソンの言葉を借りて、さらに簡単に説明しよう。「撮影で使うのは65mmフィルム。これを70mm映写機で写すと、通常の2倍の大きさになる」 というわけだ。
ウルトラ・パナビジョン70が最後に使用された映画は66年の『カーツーム』。『ヘイトフル・エイト』は実に50年ぶりとなるウルトラ・パナビジョン70で撮影された映画なのである。この一度は途絶えてしまった技術を復活させたことで、本作は密室劇ながら奥行き感のある画面構成になっており、多くのタランティーノフォロワーの映画とは一味違った映画体験を味わえる。中でも映画の中盤にデイジー・ドメルグがギターを弾くシーンは、手前と奥で違うことをしている人物をピント調節だけで切り替えて映し出す白眉の演出となっている。この映像のためだけにBlu-rayを買う価値はあるかもしれない。私は買った。
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